ブラックホールの撮影に成功
2019/4/10
アインシュタインの一般相対性理論に基づいて存在が予言されてから約100年、ブラックホールの姿がついに捉えられた。太陽のような恒星が何千億個も集まった銀河がどのようにできたかなどの解明につながる。一般相対性理論を超える新たな理論の発展へ突破口を開く期待もある。(日経電子版より抜粋)
How to take a picture of a black hole
米ハーバード大学が運営するハーバード・ スミソニアン天体物理学センター研究員であるケイティ・バウマン(Katie Bouman)氏のTEDがあったので視聴しました。
Katie Bouman: How to take a picture of a black hole | TED Talk
その中で以下の4点が述べられたのでざっくり理解できる範囲で整理しました。
- ブラックホール撮影の意義
- ブラックホール撮影の難しさ
- ブラックホール撮影の戦略
- ブラックホール撮影の肝
ブラックホール撮影の意義
地球に届くX線を解析することで、小さな体積に大きな質量の天体が存在することは確認され、それはブラックホールと名づけられます。が、その撮影には成功していませんでした。
ただし、撮影すると「ブラックホールの周囲に光のリング」が映るのでは、という予測はありました。
この光のリングは相対性理論の方程式から導出されるもので、写真が撮れた結果で光のリングが確認できれば、アインシュタイン方程式がブラックホール周辺でも成り立つことが確認できる可能性を示す意義があります。ブラックホールのような極限状態でも相対性理論は機能するのです。
簡単に言うと、特定条件でしか出せない必殺技の条件が緩和されるようなイメージです。
ブラックホール撮影の難しさ
撮影に成功したブラックホールと地球の距離は約5500万光年です。
ちなみに地球と太陽の距離は約0.000016光年、太陽を除いて地球上から見える最も明るい恒星であるシリウスは8.7光年です。
このブラックホールの輪を認識できる程度の解像度で撮影するのは、月の表面に置かれた1つのオレンジを見分けるのと同じ望遠鏡が必要と述べられていました。現存する最新鋭の光学顕微鏡を用いても月の1画素には100万個以上のオレンジが収まっているので途方もない難しさであることが分かります。
理論的に計算すれば、ブラックホールの輪を撮影するには巨大な望遠鏡を用意する必要があり、そのサイズは地球規模となってしまいます。
ブラックホール撮影の戦略
逆に言えば地球と同じ大きさの望遠鏡が作れれば光の輪を見分けることができます。
地球全体に望遠鏡をおいて光を捉えれば、地球サイズの望遠鏡として機能できそうです。
(上記TEDより画像を抜粋 地球に敷き詰めた望遠鏡をミラーボールに例える)
もちろんそんなことが現実的ではないので以下のようにピンポイントに望遠鏡を設置します。
(上記TEDより画像を抜粋 一部の望遠鏡から全体を復元する)
つまり、世界各地の電波望遠鏡を連携させることで仮想的に地球規模の電波干渉計として活用する戦略となります。
例えば、ハワイ島の望遠鏡とスペインの望遠鏡は1万キロメートル離れています。
ブラックホール撮影の肝
各地で取得したデータを1枚の写真にするには、本来必要な観測データと比べて圧倒的に少ない観測データで再現する必要があります。
そこで画像処理技術を使います。画像処理アルゴリズムによって不足している部分を埋め、概観や輪の大きさを再現します。
いわば、ジグゾーパズルをいい感じに並べて画像を生成する部分が肝のようです。動画内では「犯人の目撃情報から似顔絵を書く」という例えが用いられていました。
まとめ
本記事では「How to take a picture of a black hole」、つまり「ブラックホールの撮影方法」というTEDトークをまとめてみました。
さっそくGoogleもお祝いのDoodleを発表していました。
宇宙兄弟ファンとして、今後も宇宙の話題はウォッチしていきたいと思っています。
以上、ご参考になれば幸いです。