はじめに
ITシステムを運用するにあたり、日次で売り上げデータの集計を行ったり月次で締め処理を行うなど、定型的/定期的な作業が存在します。
そのような作業のスケジューラとしてUNIX系のcron、Windows系のタスクスケジューラがOS提供の機能として存在しますが、エンタープライズ向けに各社製品を展開しています。
具体例として有名どころは Tivoli、SystemWalker、JP1、Senju等です。ちなみにOSSですがZabbixというものも存在します。
これらの企業向け製品は、バッチ処理が大量にある場合、先行/後続関係が複雑な場合、処理が異常終了した際のリカバリー等を柔軟に行える点がcronやタスクスケジューラとの違いです。
本記事では、そのような企業向けスケジューラとして日立が提供しているJP1について簡単に紹介します。読み方は「ジェーピーワン」です。
JP1って何?といったレベルの方でも概要が理解できるよう分かりやすく説明しました。
ジョブスケジューラとは?
例えば、ファイルシステムをストレージ機能にてバックアップ処理を行う場合は以下作業を連続して行う必要があります。
- ファイルシステムのアンマウント
- ファイルシステムのバックアップ
- ファイルシステムのマウント
ITシステム用語ですが、このような一連の処理が「ジョブ(JOB)」です
そして、このようなジョブを管理するソフトウェアを「JOBスケジューラ」と言います。
cronとの違い...
当たり前ですがUNIX系列であればデフォルトで利用できるcronにはない機能が提供されています。
起動条件の柔軟な制御
指定した時間に起動したり、先行して実施したい作業が完了を待ってから起動したり、指定したディレクトリにファイルが生成されたら起動させたりすること機能を標準で利用できます。
もちろんこれらはスクリプトの作り込みによってcronでも実現可能ですが、予め機能として提供されているものをGUIを通して利用できるのがJOBスケジューラの優位性です。
進行状況の可視化
エンタープライズ向けのシステムでは、ジョブの実行失敗、いわゆる「ジョブがこける」と対外的に影響が発生する場合があります。そのような状況をリカバリーする際、今どこまで処理が進んでいてどこが失敗しているのか、をGUIベースで確認できるのはシステム運用の面で大事なポイントです。
業務用途の利用が想定されている
上にもあてはまりますが、突き詰めるとメリットは全てこれにあたります。不具合があればサポートに問い合わせることで対応してもらえます。
そして、テスト環境で試した結果を元に本番環境にリリースする際などにホスト名の自動変換を行ったり、リリースする日を予め設定することで業務を停止せずに新たなジョブのフローに変更できます。まさに、企業向けですね。
JP1/AJSの特徴
日立が提供するJP1シリーズはオートメーション製品だけではないのですが、本記事ではジョブスケジューラであるJP1/Automatic Job Management Systemに絞って記載しています。ちなみに読み方はジェーピーワンエージェーエスで、Windows、Linux、UNIXといった各種プラットフォームに対応しています。
実際の画面例は以下です。
ジョブがボックスとして表現され、カレンダーに基づいて視覚的に実行登録が行えます。
ここからはJP1/AJSの用語説明です。
基本用語
ジョブ
自動化する処理の最小単位でシェルスクリプトやコマンド単発が定義できます。JP1/AJSで扱う最小単位です。
ジョブネット
複数のジョブを繋げたもので、ジョブが起動開始する日時であるスケジュール定義はジョブネット単位で設定します。
ジョブグループ
複数のジョブネットをグルーピングしたもので、ジョブネットを管理するディレクトリのようなものです。
カレンダー定義はジョブグループに設定を行います。
製品用語
JP1/AJS - Manager
ジョブネットやスケジュールの定義を保存し、ジョブネットの実行を管理する役割です。ジョブの実行時には、実行するジョブを口述するAgentに送付し、実行状況や実行結果の受け取ります。こちらが導入されたマシンをマネージャーホストと呼びます。
JP1/AJS - Agent
ジョブを実行するためのプログラムで、Managerから送付されたジョブを実行します。こちらが導入されたマシンをエージェントホストと呼びます。
JP1/AJS - View
GUIを使ってJP1/AJSを操作するためのソフトウェアです。JP1/AJS Managerに接続し、ジョブネットの操作や実行状況の確認を行います。
JP1/Base
JP1/AJSの前提製品です。
例えば JP1/AJS - Agent が必要な場合は JP1/Base もセットで必要です。ただし、必要ライセンスはマシン毎やCPU毎等あるので最新の公式ページを確認ください。
終わりに
JP1/AJSは国内でもトップシェアのジョブスケジューラで、基幹システムの管理に採用している現場も多いと思われます。
そのような際に、概要と用語をぼんやりでも知っていれば役立つと思います。
以上、ご参考になれば幸いです。