はじめに
無線LANのアクセス制御には、CSMA/CA*1と呼ばれるプロトコルが用いられますが、有線とは異なり無線ならではの難しさがあります。
その難しさの例として「隠れ端末問題」と「さらし端末問題」があります。
本記事ではそれらの違いについて分かりやすく説明しました。
二つの問題の違い
まず共通点ですが、どちらも無線通信のスループットを低下させます。
そして違いですが、それはスループットを低下させる原因にあります。
端的に言えば
隠れ端末問題は、データを送信する端末同士が互いに見えていないことで起こります。
逆に
さらし端末問題は、データを送信する端末同士が互いに見えていることで起こります。
それぞれ、具体的に見ていきます。
隠れ端末問題とは?
CSMAではデータを送信する前に探査を行い、無線が空き状態か否かをチェックします。
そして、空き状態であることを確認してからデータを送信します。
ところが以下の図でいう右側のようにそれぞれの端末とアクセスポインタは通信できるものの、端末同士は通信できないような状況では互いは空いていると判断しつつも実際は干渉を起こすため通信できない状況が起き得ます。
このような状況で起こるスループットの低下を隠れ端末問題と言います。
この問題を防ぐべく、例えば各端末はリクエストを投げ、そのリクエストに対してアクセスポイントは返答を行うことで端末に送信権を与える手法があります。壁に遮られた端末が同時にリクエストを送ったとしても、自分のリクエストに対してではない返答が返ってきた場合は自分に送信権がないことが判断できます。
さらし端末問題とは?
上記のリクエストと返答をRTS/CTSといいますが、アクセスポインタが返答するCTSを端末が受けると、RTSを送った端末以外は干渉を起こさないように待ちモードに入ります。
ところが、以下のように別のアクセスポイントのエリアにある端末が別のアクセスポインタのCTSを受け取ってしまった場合、本来であれば右側のアクセスポインタは空き状態なのにデータの送信が行えなくなります。
これをさらし端末問題と言います。
要は、端末が隣接する別の端末のデータ通信を傍受してしまったため、本来は行えるはずの送信の抑制につながり、結果としてスループットが低下してしまいます。
終わりに
再掲ですが、データを送信する端末同士が互いに見えていないことによってスループットが下がるのが隠れ端末問題で、データを送信する端末同士が互いに見えていることによってスループットが下がるのがさらし端末問題です。
本記事では無線通信で発生する二つの問題を取り上げましたが、この問題はアクセス制御を設計する際に登場する普遍的な問題でもあります。この問題に対して各種の無線技術はどのように向き合っているかは、ぜひ興味があれば調べてみてください。
以上、ご参考になれば幸いです。
*1:CSMA/CA : Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance の略