はじめに
オークションでは複数人の入札者が互いの評価額を知らないまま、落札するために駆け引きを行います。
そんなオークションは囚人のジレンマのようにゲーム理論的要素があるので学問としても取り上げられますが、「出品者が値段を下げていき欲しい人がいれば購入する入札方式」と「入札者が値段を上げていき他に欲しい人がいなければ購入する入札方式」のどちらが出品者にとってお得なのか?というテーマで考えてみます。いわゆる素朴なテーマが学問になる例ですね。
想定シナリオ
あなたはとある商品をオークションで出品するとし、できるだけ高い値段で売りたいと考えています。
今回は分かりやすいために入札者の人の思惑を以下とします。
Aさん | 500円であれば買いたい |
Bさん | 550円であれば買いたい |
Cさん | 600円であれば買いたい |
下げていく方式と上げていく方式、どちらであればより高値で売れそうでしょうか?
下げていく方式
1000円からスタートするとします。
999円、998円と値段を1円毎下げていくと誰も声を上げず601円、600円となった瞬間にCさんは購入意思を示します。
ということで本商品は600円で落札です。
上げていく方式
1円からスタートしますが、皆買えるのでどんどん値段が上がっていきます。
499円、500円、501円ときたところでAさんはギブアップ、BさんとCさんの一騎打ちです。
そして549円、550円、551円となったところでBさんはギブアップ、結果551円でCさんが落札しました。
ゲーム理論として一般化
金額を下げていく方式競り上げ方式、上げていく方式を競り上げ方式と呼び、上の例で分かる通り競り下げ方式では一番高い価格で希望を出している人の金額で落札され、競り上げ方式では二番目に高い価格で希望を出している人の金額で落札されます。
ということで、出品側であれば競り下げ方式、入札側であれば競り上げ方式が望ましいわけです。
今回は公開入札を例にしましたが、封印入札(自分の希望金額だけを書いて提出)するタイプのものもあります。
この封印入札において、第一価格方式(一番高い金額を採用)を取れば競り下げ方式、第二価格方式(二番目に高い金額を採用)を取れば競り上げ方式と同じ結果になります。
終わりに
今回はシンプルな想定としましたが、実際は「第一価格方式であれば自身の入札価格が自身の利得に直接の影響をもたらす」という状況から希望価格よりも割り引いた価格で入札希望を出す動きが起こります。そんなオークション理論の一端を紹介しました。