はじめに
電力新聞にてノキア社の電力事業に関する記事がありました。
その中にて以下のように記載されています。
ノキアは、日本の電力会社に通信網の統合や新技術の導入を提案する。電力分野のIoT(モノのインターネット)化には通信網のさらなる高度化が不可欠。ノキアは日本のメーカーなどとも連携し、電力関連の通信インフラ市場に参入する。
(中略)
ノキアは通信会社に限られていた高速の無線通信を電力会社などが専用で使える「プライベートLTE」と呼ばれる通信網も構築できる。この通信網を導入した米センプラエナジーは風力発電所の故障予兆把握に用いて修繕費を9割削減した実績がある。
今回は上記赤字部分であるノキアが参入して実績を上げた「風力発電所の故障予兆把握」について簡単に調べてみました。
ノキア社の電力事業
前提として、ノキアはフィンランドに本社を置く通信インフラ技術を中心とするベンダーです。
2011年まで世界の携帯電話シェアは第1位だったこともあるため今でも通信業界では巨人という存在ですが、そんなノキアが電力事業を行っているというのは知りませんでした。
この背景には、スペース・タイム・インサイトというアメリカの企業を買収したことにあります。
スペースタイムインサイトは分析ソリューションにおいて世界大手の企業で、ソリューションの一つとして電力分析を行うソフトを電力会社に提供していたようです。
つまり、ノキアは上記で買収したソフトを使って風力エネルギーのコスト削減を実現したというのが正しい見方と思われます。
そして、このビジネスのポイントは修理コストの低減への貢献です。
どうやって修理コストを下げたのか?
今回の導入先はネブラスカ州の風車です。
ちなみに、アメリカのいくつかの州は総電力の10%以上を風力発電で賄っているところがあり、ネブラスカ州もまたその一つです。
さて、風力発電というのは想定以上の風力は故障の原因となるため発電ができない特徴にあるように、想定を超えた自然現象による故障は切っても切れません。
また、風車の風切り音は騒音問題にも繋がり、立地として人があまり住んでいないエリアに立てられることから、メンテナンスを行うにも人が移動する分でより時間がかかる場合があります。ちなみに、この騒音問題は日本においても存在し、それもあって海上風力発電が進められていたりもします。
さて、風車が故障によりダウンをすると、現地に人やクレーンを派遣し修理を行う必要があり、メンテナンス中は発電ができないのでそれもまた機会損失となります。
ノキアはこれを事前に予測し予防保守を行い、それらの費用の削減に貢献しました。
ノキアのサイトでも以下のように英語で記載されています。
Go beyond predictive maintenance with real-time workforce optimization to significantly lower costs and minimize downtime. Using sophisticated machine learning and prescriptive analytics, Nokia determines the optimal schedule and routing for wind turbine maintenance crews and automatically schedules work orders in your field service maintenance system.
訳:リアルタイムの人員最適化による予測的な保守を超え、コストを大幅に削減し、ダウンタイムを最小限に抑えます。 洗練された機械学習と規範的な分析を使用して、Nokiaは風力タービンメンテナンスの乗組員のための最適なスケジュールとルーティングを決定し、フィールドサービスメンテナンスシステムの作業指示を自動的にスケジュールします。
終わりに
機械学習を用いたソフトと遠隔監視システムの構築にて、ノキア社は電力ビジネスに参入しました。
停止による機会損失が大きなシステムかつ人里離れた場所にあるという条件がそろえば適用できるビジネスなので、覚えておこうと思います。