本記事では日本がLPガスの輸入先を中東だけではなくアメリカから購入することで起きた事象を例に、一か所に依存せずに多角化する重要性について分かりやすく解説します。
以下、目次です。
そもそもLPガスとは?
上の図がイメージしやすいですが、LPガス(Liquefied Petroleum Gas)とは「液化石油ガス」と呼ばれるガスで、ボンベに入れて運搬することで都市ガスのインフラが行き渡っていない郊外や地方都市で採用されています。主に一般家庭用です。
都市に住んでいる方はガス管を通ってガスが提供されているはずですが、それこそ離島のようなエリアではLPガスの方が重宝されます。
ちなみに都市ガスはメタンが主成分ですが、LPガスはブタンやプロパンです。
燃料としての違いは特には無いものの、ブタンやプロパンは常温に近い温度で液化するためLPガスとして利用されています。
逆に都市ガスは液化させるには大きなコストがかかるため、配管の中を気体で移動しています。
日本のLPガスの輸入先は?
日本LPガス協会は、WebサイトでLPガスの国別輸入量を需給日報として月次で公開しています。
日本LPガス協会(Japan LP Gas Association):統計資料:需給情報
たとえば記事執筆時のデータではアメリカが全体の過半数を占める1位となっており、2位以下に中東の国が続きます。
10年前の2000年代後半では、中東諸国で過半数以上を優に占めていました。
LPガスは石油の精製や天然ガスの精製で生産されるため、シェールガスを手に入れたアメリカは中東の国と同じようにLPガスの輸出国になりました。
日本からした変化
"週刊エコノミスト"にも紹介されていたのか以下の言説です。
昔の日本はLPガスを中東に依存しており、石油の値段に変動してLPガスも変動する変動リスクが高い状態だった。
また、価格も不透明で、中東の言い値でつかまされていた。
ところが、アメリカという新たな調達先から購入することによって興味深い作用が働きました。
例えば、中東の石油減産などによる価格つり上げが行われた場合の動きを見てみましょう。
- 中東の石油価格があがる
- 中東のLPガスの価格もあがる
- 採算が取れるためアメリカのシェールオイル採掘が活発に
- アメリカ産のLPガスの値段はあがらない(もしくは下がる)
この動きは、中東とアメリカからLPガスを買う日本にとってはトータルで見れば値段がそう大きく変動しない要因になります。
要はLPガスの価格に対してネガティブフィードバックが効く構造になりました。
これによって中東からのLPガスも言い値ではなく適正価格に近づいたとも言われています。
終わりに
足元を見られないためには多角化しておくことが大事、という構造は日常の中でも起きうる事象です。
興味深いニュースでしたので、LPガスの説明からしてみました。ご参考になれば幸いです。